伝統的酒造り
traditional sake brewing
2024年12月にユネスコの世界無形文化遺産にも登録された、日本の伝統的酒造りの基本的な流れをご紹介します。手法や仕込みの回数、火入れの有無など、地域や蔵元によって異なる点もあります。
1 米を磨く
精米
兵庫県が一大産地となっている「山田錦」などの酒米(さかまい)の玄米を削ること。米に含まれるタンパク質などが雑味の元になってしまうため、一般的に1粒の30%以上が削り取られます。このことを「米を磨く」とも言い、磨く割合で大吟醸や吟醸などに区別されます。

2 米を洗って蒸す
洗米・浸漬(しんせき)・蒸米・放冷
精米後は水洗いして糠(ぬか)や汚れを取り、一定時間水に浸します。米の品種や精米歩合、気温(水温)、湿度によって、水の吸収度合いが変わるため、それらを加味して時間などを調整。浸漬後の米は、甑(こしき)という大型のせいろで蒸していきます。その際も、気温等を考慮して、量や温度を調整します。蒸した米は、「麹(こうじ)造り」「酒母(しゅぼ)造り」「掛米(かけまい;もろみ造り)」用と、それぞれに応じた温度まで冷まします。

3 蒸米が米麹に変化
麹(こうじ)づくり
米のままでは、糖を含まないのでアルコール発酵しません。そこで、麹菌を使って米の中のでんぷんを糖に変えていきます。蒸米に麹菌を付けて繁殖させることで米麹ができます。ただ、麹菌は繁殖する過程で熱を出すので、放っておくと50度超の高温となって死滅。反対に低温過ぎでも働かなくなってしまうので、麹を造る二昼夜の間は、適切な温度管理がとても大切です。

4 酒のもとができる
酒母(しゅぼ)造り
「3」で造った米麹と水を混ぜ合わせたものに、酵母、乳酸菌、さらに蒸米を加えて造るのが、酛(もと)とも言われる酒母です。乳酸菌には、酵母の働きを邪魔する雑菌を死滅させるという役割があります。現在は精製した乳酸を使用しますが、昔は、周辺に自生する乳酸菌を繁殖させて使っていました。この古来の製法を「生酛(きもと)造り」と言います。

5 三段階に分けて原材料を投入
醪(もろみ)造り
酒母に、再び原材料(蒸米と麹、水)を追加し、アルコール発酵させて醪を造ります。全量を一気に仕込んでしまうと、せっかく丁寧に造った酒母の濃度が薄まり、酵母菌の増殖スピードもダウン。その結果、酸性を保てなくなった樽内に雑菌が増えてしまうため、酒母の様子を見ながら数回に分けて仕込みます。ゆっくりと発酵させることが重要なのです。一般的には3回に分けて徐々に仕込み量を増やしていく三段仕込みが主流で、1回目を「添え仕込み」、2回目は「仲仕込み」、3回目を「留め仕込み」と呼びます。ちなみに添え仕込み翌日は「踊り」と言い、酵母の増殖を促進するため1日放置します。計4日間にわたる三段仕込みの後は、3週間〜1カ月間かけて醪のアルコール発酵を促していきます。

6 しぼって、漉せばほぼ完成
上槽・濾過(ろか)・火入れ・貯蔵
発酵を終えた醪を袋に詰めて圧搾する「上槽」。ここで液体(日本酒)と固体(酒粕)に分けられます。液体の方を活性炭などで濾過すると、清酒という名にふさわしい透明な酒に。さらに殺菌・品質安定のため加熱処理をして、しばらく貯蔵します。なお「生酒」など、製造から出荷まで火入れ(加熱)をしない日本酒もあります。

7 銘柄で異なる最終工程
調合・割水・火入れ・瓶詰め
半年〜1年ほどの貯蔵で角が取れてまろやかになった日本酒は、再度加熱して瓶やパックに詰められ、店頭へ。同じ酒蔵の日本酒でも、貯蔵期間を変えたり、醸造アルコールや水を加えたりすることで、味わいとアルコール度数が変わり、特徴の異なる商品・銘柄が生まれるのです。

参照元/「酒みづき」https://www.sawanotsuru.co.jp/site/nihonshu-columm/